銀行員、公務員を目指す。
その時は何の前触れもなくやってきた。
「ねぇねぇ公務員試験を一緒に受けてみない?」
その声は後ろの席に座っている先輩である。
先輩は入行5年目、中堅融資係。
そんな先輩からの意外な発言に少々驚いた。
話を聞くと銀行を辞めたくて昨年から公務員試験を受けているとの事であった。
「公務員か………」
この時はまだ、真剣に考えることはなく、先輩との会話も月末の慌ただしさの中に消えていったのであった。
後日、
「こことここの試験を受けてみようと思ってるんだよね。」
ノルマ未達のまま次の月初を迎えたのに先輩は元気である。自分も同じなのだが…
先輩が見せてきた携帯には「国立大学法人」の文字が。国立大学法人も公務員だと知ったのはこの時が初めてである。
調べてみると公務員にも色々種類があって、大きく分けると(国家公務員)(地方公務員)。
その中でまた枝分かれをしているらしい。
興味が湧いてきた。
試験は早いところで6月から始まる。遅いところで9月頃といったところ。
「ふむふむ、それに向けて勉強すればいいのか…」
だんだんと公務員試験を受ける気になり始める。
転職という事を考えもしなかった自分に、新しい方向性が見え始めた入行2年目の春である。